下町ロケット

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佃製作所は、只の下請町工場ではなかった。

 

一度はロケット打上に失敗した技術研究員であった主人公が、父の他界をきっかけに、小さな町工場の経営者として出発し、2倍の規模にまで発展させたが、社内ではロケット打上の夢を諦めきれず、水素エンジンのバルブ開発に多額の資金を使うことに反対されつつ、遂には親会社からの内製を理由とした取引停止を契機に、特許権の侵害訴訟と大ピンチに出会う。

 

しかし、社内の心を一つに向けることにより切り抜け、ロケット打上に成功するのである。感動したのは、水素エンジンのバルブについての特許権を有利な条件で取引できたのに、自社で製造し、自社ブランドとしてのバルブに仕上げたことだ。ものづくりに毎日励んでいる製造業の方々には、勇気の出る一冊である。

 

尾﨑隆久