50.新しい知識でイノベーションを起こす 「事実、知識によるイノベーションは、ほかのいかなるイノベーションよりもマネジメントを必要とする」    −『イノベーションと企業家精神』P.135− ☆イノベーションの中では最も輝かしいが・・・・   新しい知識をもってイノベーションを成功させるー。これは発明・発見によるイノベーションとも言い換えられる。テクノロジーによ  って新たな商品が登場するといったパターンで、一般的には最も「イノベーション」のイメージに近い内容と言える。成功すれば、社会  を一変させ、歴史を変えるようなイノベーションも不可能ではない。企業にとっては一躍スターに躍り出るチャンスとも言えるのが、こ  のタイプのイノベーションである。   ただし、特徴として、新しい知識から生まれるイノベーションは、着手から実現までに非常に長い時間がかかる。たとえば、実用的な  コンピュータが世に登場したのは1940年代と言われているが、そこから世界を席巻するOS「ウィンドウズ95」が誕生したのは、  50年以上経ってのことである。   さらに、こうしたイノベーションは複数の新しい知識が掛け合わさって生まれる場合が多い。たとえば、飛行機はガソリンエンジンと  航空力学の賜物である。両者を同時に並行して研究することは難しいため、ある意味、時代を待たなければならない側面がどうしても出  てきてしまうのである。 ☆経営による研究・開発の舵取りが特に重要になる   新しい知識や技術からイノベーションを成功させるには、長い道のりが必要だ。だからこそ、この手のイノベーションには、経営手腕  が大きくかかわってくる。資金には限りがあるし、できればムダは避けたい。だが、新しい知識・技術を生むような専門家は、経営には  弱いことが多く、ともすれば、専門家ならではのこだわりに走ってしまいがちだ。   将来的な市場のニーズなどと照らし合わせ、捨てるべき研究は捨てるといった判断をしながら、経営者や管理者がイノベーションのた  めの研究開発をハンドリングすることが重要なのだ。 ☆新しい知識からイノベーションを生む3つの条件  1.綿密な分析が必要    新しい知識に到達したうえで、社会、経済、認識の変化などをすべて総合した分析結果に基づいて商品化を検討する必要がある。技   術としては新しくても、まだニーズに応えるには不十分なレベルである場合、さらなる研究が必要  2.戦略的な投入が必要    新知識から生まれたイノベーションも戦略を誤れば、たちまち大手や他社に追いつかれてしまう。オープンにして市場開拓をうなが   す部分、クローズドにして開発を続け、今後の差別化にあてる部分などを選択していかなければならない  3.経営者の舵取りが重要    研究開発を伴うため、資金や人材が足りなくなるなどのリスクが、他のイノベーションに比べて大きい。市場志向を見失うと、新技   術は生まれたが、まったくニーズとは見当違いのものだった、と言うことにもなりかねない。専門家をうまくリードすることが重要 実現までに時間と資金が必要な新しい知識のイノベーションでは、経営サイドの舵取りが不可欠