48.人口構造の変化からイノベーションを導く 「人口構造の変化は、いかなる製品が、誰によって、どれだけ購入されるかに対し大きな影響を与える」   −『イノベーションと企業家精神』P.93− ☆明らかに“読める”変化、それに取り組む人は少ない   ここまでイノベーションのチャンスとして、予期せぬ成功・失敗、会社と消費者の不調和、3つのニーズ、産業構造の変化について触  れてきた。これらは、会社の内部、市場の内部で見られるものだ。   一方、市場の外部で起こる変化もイノベーションのチャンスになりうる。つまり、需要構造そのものが変化してしまう、という状態だ  。これが@人口構造の変化、A物事に対する社会の認識の変化、B新しい知識の出現である。まずは@について見ていこう。   人口構造とは、人口の増減、年齢構成、性別構成、雇用状況、教育水準、所得階層など、人口の絶対数、属性や割合すべてを指す。こ  れらが変化すれば、「何が一番必要とされるのか」も当然、変化する。人口構造の変化は、実に明白で予測も簡単。しかも、「いつごろ  起こるか」までわかる。イノベーションを起こす機会としては最も取り組みやすいはずであるのに、それに対応しようとする会社が意外  に少ない、とドラッカーは指摘している。 ☆最も注目すべきなのは年齢構成の変化と多数派層   人口構造の変化のなかでも、年齢構成の変化に注目しておくことが重要、とドラッカーは言う。特に「一番多い年齢層はどこか」であ  る。先進諸国では、少子高齢化が進んでいる。たとえば、日本の人口統計によると、2030年に日本の人口構造は65歳以上が30%  以上、対して15歳未満は10%前後になるという。   ビジネスに役立てるにはもっと細かい分析が必要だが、こうした事実を踏まえて、高齢者の雇用、生産部門の機械化の推進、外国人の  雇用と教育、可能な部署の海外移転などに備えておく。そうすれば、実際に変化が明らかになってから慌てて対応を迫られなくてよい。  他社が適応に時間をかけている間に、市場のシェアを獲得しているわけだ。 “人口構造の変化への対応は確実で生産性も高いイノベーションのチャンスである”