47.産業界が揺らぐときはむしろチャンス 「構造変化は、その産業の外にいる者に例外的というべき機会を与える。ところが、産業の中にいる者には同じ変化が脅威と映る」   −『イノベーションと企業家精神』P.80− ☆「安定した産業」などどこにも存在しない   業界というものは、そこで長年働いている人には安定していて不変であるかの様に見えるものだ。しかし、産業構造は意外にもろく、  あっけなく崩壊する。たとえば、音楽CD販売という産業はインターネットとiPodを初めとする携帯音楽プレーヤー、iTunesStore  のような音楽配信サービスの登場によって大打撃を被っている。   産業と市場の構造は常に変化する可能性がある。安定していた産業界も、一度揺らげば、そこに隙間ができる。その隙間を埋めること  (ニッチ戦略)は、イノベーションにつながる。音楽で言えば、自分のデータを大量にPCに集約するライフスタイルが浸透し、CDを  買って保管するという従来の方法に煩わしさを感じる人が増えてきた。そこに市場の隙間(=新しいニーズ)が誕生したわけだ。こうし  た隙間は、よりシンプルに埋める方法を提示した企業が勝つ。アップルが提供したような、ワンクリックでパソコンに楽曲をダウンロー  ドしてiPodに移行できるしくみは、その好例だ。 ☆変化=チャンスとみなしていち早く適応すべき   産業・市場構造の変化は、外部の人・会社のほうが気づきやすい。彼らにとっては参入のチャンスだ。一方、業界側から見ればそれは  脅威になる。日本でIT企業がテレビ業界に参入しようとしたとき、テレビ業界は激しく抵抗した。   けれども、そもそも変化とはコントロールできないものだ。変化を脅威と見て守りに入り、抵抗しても、せいぜい変化の速度を遅らせ  、多少延命できるのが関の山だ。むしろ変化は「隙間を生むモノ=新しいチャンス」と捉えたほうが生産的だ。変化は自らを変えること  を要求する。それはとてもエネルギーがいる。だが、市場の変化に対応して価値を提供し続けることが会社の使命である。そう考えれば  、変化は避けて通れない。 ☆産業構造はこうして変化する  1.ある産業が急速に成長し、産業規模が2倍に成長するとき    経済成長や人口増加よりも早く、ある産業が急成長しているとき、その構造は大きく変化する。そして、産業規模が2倍にまで成長   すると、市場の見方や対応は、それまでのやり方が通用しなくなる。すると変化に乗れない「大手」が、その地位を維持できず、急速   に力を失うこともある。中小企業やベンチャー企業にとっては世代交代のチャンスでもある。    例:インターネットの普及→「Web広告」「音楽ダウンロード販売」「ネット通販」「ネット証券」・・・・  2.複数の技術が合体したとき    技術と技術が合わさって新しい技術が生まれたときも産業構造は変化する。市場のニーズに応えた新技術の登場であり、実用化され   れば、それに合わせて人々のライフスタイルも大きく変化しうる    例:電話+録音機→「留守番電話」、携帯電話+カメラ→「カメラ付携帯電話」、電子地図+GPS→「カーナビ」・・・・  3.仕事の仕方、働き方が大きく変化したとき    人々のワークスタイルが変化すると、それに合わせて特に法人向けビジネスがまず変化する。法人向けニーズに対応している商品は   やがて一般消費者へも浸透していく    例:ノートパソコンの普及→外で仕事をする人が増える→モバイル通信へのニーズ増加→「高速モバイル通信」「携帯電話の高機能      化(スマ−トフォン)」、職場で書類の電子化が進む→「ドキュメントスキャナの普及」「サーバー技術・クラウドサービスの      成長」 “産業・市場の変化には常に備え、いち早く市場の隙間を察知する”