45.3つのニーズを満たして新たな価値につなげる 「イノベーションの母としてのニーズは限定されたニーズである。漫然とした一般的なニーズではない。具体的でなければならない」     −『イノベーションと企業家精神』P.61− ☆「ない」ことに気づきイノベーションにつなげる   予期しない成功や失敗、4つの不調和などは、何らかの現象が「発生した」、つまり「あること」によってイノベーションが必要と気  づいたパターンと言える。逆に、「存在しないこと」、つまり「ないこと」に気づくこともイノベーションの源泉になる。ニーズに気が  つく、という視点だ。   ニーズとは存在しないものに対する要望なので、視覚化されていない。発見すること自体が難しいものなのだ。特に事業の改善につな  げるためのニーズとなれば、なおさらである。   ここではドラッカーが指摘するイノベーションを導く3つのニーズについて紹介しよう。 1.プロセス・ニーズ(プロセスの弱点や欠陥を修正してニーズを満たす)   サービスは提供しているのに、どことなく満足されていない。そんなときは、プロセスを調整することでそのニーズに答えられる場合  がある。提供方法や集配時間、確認方法などを消費者のニーズに合わせることができれば、サービス自体は既存のものでも、こぼれてい  た消費者を広くすくい上げることができる   プロセス・ニーズをうまくとらえた近年日本の例では、DVDをネットで注文すると郵送で届き、郵便ポストへの投函で返却できると  いうサービスが挙げられる。DVDレンタルというビジネスはそれまでもあったが、「映画は見たいがわざわざレンタル店まで行くのは  面倒、または時間がない」と考える人たちの不便や不満を解消して成功したわけである。 2.労働力ニーズ   労働力の体制を変革することで、市場とのズレを解消し、ニーズに応えられる場合がある。ロボットを使ったオートメーションなどは  、その好例。また、製造業の海外進出、派遣社員の多様化などもこの労働力ニーズへの対応の現われといえる。 3.知識ニーズ   市場とのズレを解消するために、新しい知識が必要とされている状態。たとえば、携帯電話にカメラを掲載する、さらに動画も撮れる  ようにする、といったイノベーションには、研究開発が欠かせない。プロセス・ニーズを解消するために必要な場合もある。 “プロセス・ニーズとは、市場が感じる不満・不安を察知して新しい「届け方」を開拓すること。”