44.傲慢な思い込みと独断がズレを生む   「価値観ギャップの背後には、必ず傲慢と硬直、それに独断がある」  −『イノベーションと企業家精神』P.57− 3.会社と消費者の価値観のズレ    「消費者はこんな商品を求めているはずだ」と決め付けて市場に商品を投入しても、それが消費者の価値観に合わなければ、業績は   伸びない。会社と消費者の価値観のズレは、たいてい会社のほうの「消費者はこう考えているはずだ」という思い込みから生じる。    たとえば、東京でサラリーマンを勤め上げた人が定年後、田舎でペンションを始めたとする。目の肥えた東京からの旅行者を見込ん   で外観も内装もヨーロッパ風にしつらえ、料理は高級なワインとフランス料理のコースを用意した。だが、なぜか宿泊客は伸びない。   こんなとき、そこには供給側と需要側での価値観のズレが生じている。ペンション経営者は「東京の人はおしゃれだから、小奇麗で   洗練された宿に泊まりたいはず」と思い込んでいたが、実際にその地方に泊まりに来る人は、その地元でしか味わえない素朴な雰囲気   や自然、郷土料理のほうがむしろ新鮮で、そうした体験を味わいたいと思っていたのだ。    価値観のズレには、必ず「消費者はこう考えているはずだ」という傲慢な思い込みと独断がある。ペンションの例で言えば、「私は   東京生活が長いから東京の人の考えがわかる」というひとりよがりだ。    事業の本質は「顧客本位」。こうした態度はNGである。 4.プロセスのズレ    提供しているモノやサービスは悪くないのに、仕事のプロセスがまずいせいでうまくいかないパターンのこと。確かに需要はあるは   ずなのに、なぜか売れない。    そんな場合、売り方が間違っていて、本当に欲しい人に届いていない可能性がある。つまり「届け方」「提供方法」という「プロセ   ス」に改善の余地があるわけだ。    プロセスを正せば、サービスや商品自体を根本的に変更しなくても、イノベーションは実現できる。 ☆イノベーションの源泉:不調和   顧客ニーズに十分に応え切れていない供給体制のこと。以下の4つを調和させる発想がイノベーションのヒントになる。  @需要と供給との不調和→品不足 A思い込みと現実との不調和→希望的観測 B消費者の価値観との不調和→モノからの発想  Cあるべき姿と現実との思惑の差→プロセスの欠如。   現場に行ってよく見て、よく聞けば、それらが発生していることがわかる。原因がわかれば、解決の手段の方向性が見えてくる。 “消費者に対する思い込みは禁物。イノベーションのチャンスは、「届け方」にも潜んでいる”