39.コンピュータの登場が本当の意思決定を迫る 「コンピュータのおかげで、これまでは反応するだけだった人たちのきわめて多くが、真の意思決定者、真の執行者とならなければならな くなる」   −『経営者の条件』P.209− ☆改めて考えるコンピュータの特性  コンピュータは、仕事に飽きたり、疲れたりしない。残業代もかからない。人間の能力を増加させる頼もしいツールである。そして、最 大の強みは論理的であることだ。プログラムに組まれたことを正確に、かつスピーディーに行うことができる。      だがそれは、裏を返せば、コンピュータは指示なしでは動かないし、単純で明白なことしかできないということでもある。  一方、人間は論理的ではなく知覚的だ。つまり、のろくていい加減である反面、聡明で洞察力、応用力がある。人は不十分な情報から全 体像を推測でき、プログラム化されていないことを考えられる。 ☆コンピュータに決めることはできない  コンピュータはどんな問いにも答えてくれる万能の箱ではない。むしろ、私たちに常に「意思決定」を迫る厳しい追及者である。  たとえば、在庫管理のように厳密さを求められる作業はコンピュータの得意分野のように思える。しかし、急に納品が間に合わなくなる 事態が起こったとき、「A社は納品日の午前中に間に合わせないとクレームがつく。B社は、前に急ぎの注文に応えた貸しもあるし、ある 程度の融通はきく」といった様々な事情をコンピュータが吟味することは不可能だ。コンピュータによる在庫管理には原則が必要なのだ。  そこで私たちが原則をつくろうとすれば、すべき決定は在庫管理の範疇を超え、膨大な範囲に及ぶことになる。実はコンピュータの登場 により、意思決定の機会は増えたのだ。働く人の誰もが、成果をあげる決定をもとめられていることを理解しよう。 ☆パソコン(コンピュータ)と人の限界とは?  【パソコンの領域】・繰り返し行う計算の正確かつ迅速な処理        【限界】・決めたこと以外は何もできない           ・コミュニケーションにおける時間、距離、コストの節約     ・論理的だが愚直           ・分析のための指標をいくらでも計算できる           ・選ぶことはできない           ・仮定の数値から論理的にシュミレーションできる           ◎すでに起きていることを明確化、数値化することが得意                ↓  <意思決定の際のあいまいさを浮き立たせる>  【人の領域】   ・方針を決める                     【限界】・感覚的で知覚的           ・未知の出来事の正体を洞察する                 ・信じたいものを信じる結果、リスクを過小           ・不十分な情報から全体像を推測する                評価する           ・事前に対応を決めておく                    ・勘と度胸で決断してしまう            ・過去の経験から応用力を発揮する           ◎「では、どうするのか」を決めることができる   より適切な意思決定(正しく意思決定を下す能力=成果をあげる能力)⇒「仕事ができる人」の要件としてますます重要に! “現代は「判断する力」がより一層問われている。”“コンピュータはあくまで道具。決断するのはあなたである。”