21.能力に応じて仕事を組み立てて成果につなげる 「機械の仕事とは異なり、人の仕事は、スキルや判断の要素をまったく含まないものであってはならない。最低レベルの仕事であっても、 ある程度計画の要素をもつ必要がある」   ー『現代の経営(下)』ー ☆いかに効率よく人を配置して生産性を高めるか?   かつて、アメリカの生産体制の王道であったフォード式=B今でもそれを踏襲する現場は存在する。だが、真の生産性はフォードを  超えた所にある。フォード式の特徴は、スタッフが異なる単純作業を分担し、大きな生産ラインを構成すること。単純作業の連続で完成  品が出来上がる仕組みだ。だがドラッカーは、例としてある通信販売会社の発送工場の事務部門での組織を再編し、生産性を30%近く  高めることに成功したのだ。その会社では、注文書の処理を流れ作業にしていた。苦情処理をする者、問い合わせに応える者、月賦の申  し込みに応える者・・・。まさにフォード式だった。それを、スタッフがそれぞれ特定の顧客を担当することにし、関連する作業はすべ  て行うようにするというものだった。さらに、それまで個別の対応は現場担当者が引き受けていたのを修正し、事務方も自分の意見を伝  えられるようにした。 ☆多様化する消費者ニーズに対応する形の「セル生産方式」   ポイントは、1人の顧客への対応で必要な作業は、すべて同じ人が担当する点。単純作業を組み合わせたほうが効率はよさそうだが、  現代では、機械化すればよいだけだ。人間は能力に応じて、自分の判断が必要な大きさの仕事を与えたほうが、高い生産性を発揮するの  だ。もちろん、1人ではできないほど作業規模が大きかったり、複雑な仕事のときは、チームをつくる。その際もやはり、チーム全体に  細部の判断を任せる。「セル生産方式」とは、1人から数人の作業員が、1つの製品に関して、部品の取り付け、組み立て、加工、検品  まで、すべての工程を担当するやり方。多品種少量生産にむいているため、様々な消費者のニーズに応えやすく、流れ作業のように、一  箇所作業が滞ることで、全体の生産性が大幅に落ちることがない(部品が足りなくても、それを待ちつつ、他の作業を進められる)。  一方、作業員は多能工であることが求められるため習熟に時間がかかる、などのデメリットがある。 “生産性をあげる糸口は信じることにある。一人ひとりのスキルと判断力を信頼し、思い切って任せてみよう。”