リーダーになったらこの本 2

第六章 問題解決のリーダーシップ

 

 

⑬肌が合わぬ人物をどうしたらいい -虫が好かぬ人間は必ずいるもの-

 

 人間の集団の中には、一人や二人は、どういうものか肌が合わない、虫が好かない者がいるものである。これは理屈のつかない、感情的な反発である。

 

 リーダーとなった以上は、このような存在はなるべくなくすようにしないと、チームはうまくまとまらない。

 

 そこで、こういう虫の好かぬ人物に、少しでも好感を持つようにするコツを述べてみることにしよう。

 

 実は、こうした虫の好かぬ、肌の合わない連中というのは、自分にとてもよく似ているものである。誰でも自分の醜い面を見たくはない。それが鏡に映すように眼の前に出てくるからムッとするのである。磁石が同じ性質のN極とN極が反発するのと同じことである。ケチな人間はケチが大きらい、わがまま人間はわがままを毛嫌いするのである。

 

 そこでその人は、自分と同じように、悪い面もあるが、良い面も必ず持っているはずだから、その面をつとめて見出すようにすると、いつの間にか反発はなくなり、お互いに好意関係が生まれてくるものである。感情に対する理性の勝利である。

 


第六章 問題解決のリーダーシップ

 

 

⑫思想をもって反抗する批判グループ -自分の存在価値を認めてほしいのか-

 

 最近ではイデオロギーは流行らなくなり、思想的な労組活動もひと頃に比べるとずっと下火になったが、それでもまだ特定の思想を持って反抗する批判グループがあるようだ。

 

 しかし、ほんとうに思想的な確信をもって反体制に走る者は、ごく例外であり、大部分は自分の反抗心に箔をつけるために、思想の仮面をかぶっているものである。そして暴走族と同じく、一人では弱々しいが、グループを作ると、とたんに元気がよくなり、いわゆる徒党を組んで反抗するようになる。しかし、もともとベースがベースだから、グループのリーダーが挫折すると、〝親亀こけたら皆こけた〟になるものである。

 

 したがってこういうグループをなだめるには、リーダーにマトを絞るに限る。 

 

 そのリーダーも、もともとは、自分の存在価値が認められぬ不満からマイナス・リーダーになり、みんなの不満の代表者として支持されることで自尊心を満足させているものである。だからそのリーダーの実力を認め、重要な仕事の責任者にし、思い切ってまかせると、そのグループともども、協力的になってくる。存在価値を認め、力量にふさわしい責任を与えるのがコツといえよう。

 


第六章 問題解決のリーダーシップ

 

 

⑪何かにつけてたてつくヘソ曲り -例外を認めろと迫るワルの処置-

 

 よそから移ってきた新任のリーダーに対して何かにつけてイチャモンをつけ、反対し、たてつこうとするヘソ曲りがたまにいる。

 

 こういう連中は、職場のインフォーマル・リーダーとしての実力を新任リーダーに認めさせ、いろんな点で自分だけは例外扱い、一目置かせようという魂胆なのである。

 

 こういう場合、ひるんだら新人リーダーの負けである。基本は「最初の例外を許すな」である。一人に例外を認め、ルール違反を黙認すると、二人目、三人目のわがままをおさえられなくなり、職場は無法地帯化する。

 

 新任リーダーは上司と緊密な連携をし、不文律的なルールに対しては、断固として注意をし、毅然として指揮権を発揮することが信任への第一歩となる。

 

 たとえばベルがまだ鳴らないのに勝手に作業をやめ、手を洗い、食堂にかけつけようとするといったケースである。

 

 例外を認めない理由をみんなに納得のいくように説明し、暗黙のルール違反は許さないと明言することである。そうすれば前例があっても新しいルールが確立されるのである。

 


第六章 問題解決のリーダーシップ

 

 

⑩やる気を失った年長者の扱い -定年までほっといてくれと尻まくり-

 

 年長者の中には、もう定年も間近なことだし、ほうっておいてほしいと、もはやあきらめの心境で、尻まくりの開き直りの状態になっている人がいる。

 

 もうこれ以上出世する見込みもないし、収入をこれ以上増やそうという気もない。ひたすら退職金の出るまで、無事平穏に過ごしたいという年長者の気持ちはわからぬでもない。

 しかし、職場の中にそうしたクールで、沈滞した部分があると、全体に影響を及ぼし、足を引っぱられるおそれがある。

 

 そこで、これら年長者に少しでも活性化してもらうように工夫し、指導せねばならない。そのコツは年長者がこれまで蓄えてきた貴重な経験や技能・技術を、先生になって教えてもらい、後進に伝え残すために貢献してもらうことである。

 

 自分たちが、もはや無用の存在となったと思えばこそ、ひがみっぽくもなり、引っ込み思案にもなる。反対にまだ存在価値があり、先生として生きた遺産を残すことができ、期待されていると思えばやる気も出、明るい気持になる。この変化をもたらすのはリーダーの腕次第である。

 


第六章 問題解決のリーダーシップ

 

 

⑨自分より年輩の部下をどうリードするか -かつて教わった人を指導する辛さ-

 

 職制への昇格も、かつては年功序列を重視していたが、実力主義の今日では、序列を越えて、若手がリーダーになる傾向が多くなってきた。

 

 そうなると、若い頃に先輩として教えてくれた人を部下にすることになり、後輩としてはまことに辛い立場となる。しかし、これは会社の方針だから致し方ない。

 

 部下となった先輩も、自分に実力がなかったのだからと、あきらめるしかないが、心中おだやかならぬものがあるのも無理からぬことである。

 

 こんな場合、リーダーとしては、公的な場面では、社長の代理という気持で、毅然として、テキパキと指揮をとらねばならないが、それ以外の場面では、つとめて先輩を立て、さらに相談役になってもらい、メンバーがリーダーにいいにくいことを代弁してもらうようにするといい。先輩はいつまでたっても先輩であり、むしろ、昔教えた後輩が出藍のほまれで、先輩や上司を乗り越えて成長することをよろこぶようになりたいものである。

 

 いまの後輩が、やがて自分を乗り越えて伸びていくことをむしろ期待する心境になれば、先輩との関係もうまくいくようになろう。

 


第六章 問題解決のリーダーシップ

 

 

⑧女性ばかりの職場の男性リーダー -女性特有の性質を知るのがカギ-

 

 女性ばかり、女性が圧倒的多数を占める職場で男性がリーダーになるのは、昔からのことで何も珍しいことではない。しかし中年のパート女性を息子のような若いリーダーがまとめていくといったケースは新しい現象といえるかもしれない。

 

 これも前のケースと同じで、女性の中から強力な人物を選んでサブリーダーとし、よく相談しつつ仕事を進めるのがうまくいくコツである。

 

 女性は、男性と違う「生理」を持っており感情がデリケートである。したがって感情によってグループを作りやすい。このグループのリーダーをサブリーダーにするのがコツである。そして「人間関係をそこなわない限りでのグループ同士の競争」が職場を活性化するのであるから、グループで競争するように、リードするといい。

 

 グラフなどを作り、一目で成績がわかるようにすれば自然にハッスルし活性化する。もめごとが起きたら、グループのインフォーマル・リーダーを呼んで話を聞き、話がつけばグループ間の対立も自然におさまるものである。男性リーダーに人間的魅力があることが望まれるのはいうまでもない。

 


第六章 問題解決のリーダーシップ

 

 

⑦男性ばかりの職場の女性リーダー -性を超越したらあとは同じ-

 

 経営者や年輩者は、古い考えにとらわれているから、男性ばかりとか、男性の多い職場で女性がリーダーになったら、リードできるだろうかと大いに危惧する。

 

 ところが男女共学で育ち、女性の方が成績が良く、リーダーになってあたりまえという若い世代には違和感がない。新人社員にグループリーダーを選ばせ、その中から総リーダーを選ばせると女性がよく当選する。その本人も、まわりの人たちも、それで当然と考えている。これが新しい時代である。日本にもサッチャーの時代がやがて来るであろうことは必至といえよう。性を超越した実力主義の時代になったのである。

 

 女性のリーダーの方が、当りがやわらかく、芯はしっかりしているので、頼もしいといわれるようになったのは、まことに従来とは隔世の感があるといえよう。

 

 女性リーダーとしては、男性の中の有力な人物をサブリーダーにし、何かにつけて相談しつつ進めていくのが、チームをうまくまとめていくコツである。しかし、肝心な所では鉄の女と呼ばれるように妥協しないことによりリーダーの権威は確立する。

 

 これからは、多数の女性リーダーが生まれる時代になっていくにちがいない。

 


第六章 問題解決のリーダーシップ

 

 

⑥世代のギャップを痛感した時どうする? -若い人に教わるのが最良の知恵-

 

 四千年前に建造されたピラミッドの廊下に古いエジプト文字で「近頃の若い者はなっていない」と落書されていたという有名な話がある。

 

 人類は昔から「近頃の若い者はなっていない」といい続け、その若い者によって文化文明が作られ、歴史は発展してきたのである。年輩者は古い考えや価値観が正しく、すぐれていると思いがちだが、半分は正しく、半分は正しくない。

 

 同じように、若い者の考えや価値観も半分は正しく、半分は未熟、不完全である。したがってお互いに教えあうのがいちばん良い方法である。相手のすぐれたものを教わり、学ぶことにより双方とも成長し充実することができる。

 

 とりわけ、年輩者、リーダーの方から、進んで学ぶ姿勢を取ることが望まれる。

 

 音楽でいえば、年輩の人はメロディ派で、歌詞の短い歌を好む傾向がある。また若い人の好きな歌はもっぱらリズム感であり、歌詞は長い。そこでやかましい音と単調なメロディに年輩者は閉口するが、リズムを味わい、歌詞をよく知ると、音楽の感じ方も変ってくる。こうして学ぶことにより話は合ってくるのである。

 


第六章 問題解決のリーダーシップ

 

 

⑤価値観の違う若い人をリードするコツ -「若い」とは何かも問題-

 

 リーダーがいつの時代にも困惑するのは世代間のギャップである。同じ日本人でありながら話が合わないので指導に迷うのである。

 

 その第一は、何といっても価値観の違いである。価値観とは、平たくいえば、「有難味」である。物や金や仕事のない時代に育った古い世代は、物や金や仕事に大きな価値を見出し、それを保証してくれた企業に強い帰属感を持っている。

 

 ところが豊かな社会に生まれた若者たちは、物や金が豊かなのはあたりまえ、経済成長期だからどこでも就職できるので帰属感は薄い。その代りに、心の豊かさを求め、自由時間を何より求め、大切にする。だから、休日の少ない会社は敬遠されるのである。

 

 もっとも、「若さ」の定義も問題である。肉体の若さは二十五歳がピークであとは老化が進む一方である。しかし、夢と希望をもち、努力して成長する限り、肉体は老化しても心は青年である。反対に若くても人生をあきらめたら若年寄である。

 

 ほんとうの「若さ」、つまり人間的成長にまとを絞れば、新旧の世代の価値観は一致していくはずである。

 


第六章 問題解決のリーダーシップ

 

 

④みんなで解決するのがベスト -リーダー一人で苦労するなかれ-

 

 問題は衆智を集めて解決するのがいちばんよい。リーダーが一人で難問を背負って苦しむのは、組織人としては問題である。

 

 非常に問題の多い職場に送りこまれたリーダーの場合、みんなが反目し、非協力的で、どこから手をつけていいかわからない場合、どうしたらいいであろうか。

 

 まず、みんなに率直に問題の深刻なことを告げ、衆智を結集することの重要性を強調し、リーダーとしてみんなの知恵を借りるという姿勢を明らかにすることである。しかし、これだけでは、違和感、不安感、警戒感を取り除くのはむずかしい。なぜならこれまで何人ものリーダーがこの職場で失敗してきているからだ。

 

 そこで、新リーダーは、メンバーの中の、有力な人物を見つけ出し、その人に心中を打ち明けて、徹底的に話しこみ、共感にまで進み、腹心の協力者にすることである。

 

 一人パートナーができたら、こんどは二人で三人目に働きかける。このようにしてジワジワと協力者を増やしていくと、ある階段からパッと霧が晴れたように、全員の協力体制ができあがり、一気に変革が進むものである。核づくりが成功の基本ということである。

 


第六章 問題解決のリーダーシップ

 

 

③見える問題と見えてこない問題 -眼光紙背に徹するプロリーダー-

 

 問題解決にあたって留意すべきことは、見える問題、表面化した問題にばかり気をとられて、より重要な、まだ見えてこない問題、潜在的な大問題に気がつかないことである。

 

 「桐一葉、落ちて天下の秋を知る」という故事があるが、ちょっとした異常現象から、きわめて大きな問題の発生を感知し、一時的な対応策だけでなく、問題の根本的な原因をえぐり出し、思い切った対策を考えるのがプロリーダーである。

 

 新聞を読む場合でも、いわゆる「眼光紙背に徹す」といわれているように、何が書かれているかだけでなく、何が書かれていないか、さらに、なぜこのように大げさに書き立てているのか、その本当の狙いは何かを見ぬいてこそ、プロ中のプロといえるのである。

 

 このように熟慮することの大切さは、いくら強調しても、強調しすぎることはない。

 

 たとえば、今までめったに休んだことのないベテランが連続して休んだり、おとなしかった青年が急に反抗的になったりしたら、その奥にきっと何か異常が生まれていると思ったほうがいい。そうでなくても「彼等が黙せるは叫べるなり」の教えのように、心中の叫びが聞こえるようになってこそプロなのである。

 


第六章 問題解決のリーダーシップ

 

 

②問題がたくさんあることは問題でない -最重要問題の特定が肝心-

 

 何か行動をすると、汗が出るのと同じように問題が次々に発生してくる。問題が多いのは活動している証拠であり、それを一つひとつ解決することによって、収益が増大する儲けのタネと思えばよい。

 

 しかし、人、予算、資材、時間には限りがあるので、たくさんある問題のうち、どれを優先的に解決するかを特定することが大切になる。優先(重要)順位判断力である。

 

 「問題はたくさんあるけど三つしかない」という金言は、問題を重要順位に並べ変え、上位三つの問題解決にエネルギーを集中せよという教えである。三つが解決したら、次の三つに取り組むというやり方である。そうすると、非常に効率的に仕事が進むこと請合いである。優秀なリーダーは、最上位の七つないし十の問題解決にエネルギーと時間を集中し、八または十一位以下の問題解決は部下やメンバーにまかせるものである。

 

 ナポレオンも問題が山積している時は、最も多忙な優秀な部下にやらせるのを常としたという。それは優秀な人物は、仕事の優先順位判断にすぐれているからに他ならない。その場合、下位の問題は順次ずらして、部下にまかせていったことはいうまでもない。

 


第六章 問題解決のリーダーシップ

 

 

①問題解決の基本的なすすめ方 -何が本当の問題かで半分解決-

 

 問題解決はリーダーに求められる重要な任務である。人間と社会の問題はいわば多元多次方程式のようなもので、容易に答を出すことのできないむずかしいものである。

 

 問題解決がむずかしいのは、何が本当の問題かがなかなかよく分からない点にある。「ほんとうの問題がわかれば、答は半分出たも同じ」というのが基本である。

 

 わかりやすい例でいえば、「頭が痛い」という問題は現象であるが、これにも肉体的な頭痛と精神的な苦痛とがある。肉体的には、その原因が何であるかによって、処置が違ってくる。二日酔い、風邪、ムチ打ち症、脳腫瘍で、それぞれの治療法は大きく変わってくる。ただ「頭が痛い」というだけでは治療はできないのである。

 

 問題解決のステップはいわゆる五W二H法でやるのがいちばん効果的である。

 

 まず何(what)が問題かを特定したら、その原因(why)を究明する。原因がわかれば対策(how―どうする)を考える。しかしここで終わると解決しにくい。さらに具体策に進む必要がある。いつ(when)、どこで(where)、誰が(who―担当、責任者)、いくらで(how much―予算、経費)まではっきりして、はじめて解決に向かうのである。

 


第五章 創造性を高めるリーダーシップ

 

 

㉑マネジメントは「状況の先取り」 -変化には変化で対応を-

 

 マネジメントを一言であらわすと「状況の先取り」となる。

 

 これは「先手必勝」「先手は万手」ということであり、「先んずれば人を制す」と昔からいわれている。先行利潤がいちばん儲かることも誰でも知っていることで、後手、二番手だと、競争が激しくなり、当然利益率は低下する。

 

 ただし、先手は危険と困難が多く、成功の確率は高くない。それだけに成功するとライバルもいないから大儲けできるのである。

 

 時代はどんどん変化する。人間が存在するかぎり、需要がなくなることはありえない。ただし、その需要は時代の流れとともに、刻一刻と変化する。

 

 その変化に対して、こちらも変化する。「変化には変化」である。そしてこちらの変化が二つに分れ、状況の先取りと柔軟な対応になる。状況の先取りは積極策で、柔軟な対応になるとやや受身になる。柔軟にすべきところは、頭脳(考え方)と組織である。

 

 組織はこれまでに述べてきたように、柔軟化、動態化して変化に即応できるようにする。しかし、それには思考の柔軟化が先行しなければならないのである。

 


第五章 創造性を高めるリーダーシップ

 

 

⑳人に聴くより良い知恵はない -万古不易の創造性開発の鉄則-

 

 創造性開発をすすめるリーダーにとって、万古不易の鉄則は「人に聴くより良い知恵はない」であろう。このことばは、私の老恩師から教わったものであるが、三十年の経営コンサルタントの体験から、実にすばらしい教えであると確信するに至っている。

 

 このことばの根拠は二つある。一つは、人間の知能は、無限大といっていいほど奥の深いものであるから、これを引き出すほど良い知恵はないということである。二つめは、この世の中は、どこまでいっても人間の世界であり、人間が存在する以上、人間的需要に限度はないということである。

 

 したがって、需要がなくなることは決してないが、その需要は時代とともに変化する。それがどのように変化するかは、人を観察するのがいちばんいい。しかし、これからの変化を予知するには、表に現われる以前の心に聞いてみるに限るということである。

 

 未来の市場や商品やサービスは、すべて人の心の中にあり、それをニーズになる前のシーズ(種子)の段階から発見するのがプロ・リーダーなのである。こちらが真摯に聞けば聞くほど、良い知恵は無限に湧出してくる。

 


第五章 創造性を高めるリーダーシップ

 

 

⑲仕事がヒマなら考える時間は増大 -ジタバタするより熟慮が妙手-

 

 不幸にして、やっている仕事が時流に合わなくなり、売上が減り、ひまになったらしめたものである。これは神がじっくり考える時間を下さったのだととらえ、みんなで考えることである。ジタバタするより熟慮するほうが、ずっと知恵のあるやり方である。

 

 「三人寄れば文殊の知恵」ですばらしい知恵が続出する。「窮すれば通ず」で苦しい時ほど良い知恵が出る。自分たちのやっていることを本質的に掘り下げ、社会が自分たちに何を求めているのか、自分たちは何をなしうるのかを徹底して考えることである。

 

 昔からのトランプ・花札メーカーで目立たない小企業だった任天堂が、需要が減り、自社の社会的使命は知的な遊び道具を作ることであると再認識し、ファミコンを創造して、大手有名メーカーをはるかに上まわる高収益会社になったのも、このような思考の変換のためである。 

 

 無名の砥石メーカーが、その特殊技術を活かし、超LSIの切断機メーカーに変身して世界的な時代のパイオニアとなったディスコなど、すぐれたリーダーは古いメーカーを時代の最先端のメーカーに変身させるのである。

 


第五章 創造性を高めるリーダーシップ

 

 

⑱人はあまっているのに気がつかない -見方、考え方を変えることが大切-

 

 人不足というのも、こちらにとって都合よく働いてもらえる人が不足しているのであって、見方、考え方を変えれば、人はあまっているのである。気がつかないだけである。

 

 六十歳以上の高齢者は二千万人もいる。このうち半分は無理と計算しても、一千万人は、受入れ体制を変えれば、十分受け入れられる。

 

 また働きたがっている人はきわめて多いのである。家庭の主婦も半分はまだ活用されていない。学生も三人に一人は卒業しても就職しようとしなくなっている。さらに企業内失業者といって、窓際族などと呼ばれ、事実上遊んでいる人もたくさんいる。ムダをなくせば、三分の一の人は浮いてくる・・・といった具合で、いくらでも人はいる。

 

 外国人労働者の受け入れをめぐって云々されているが、あわてて導入するより、行革を進め、能率を上げ、三分の一は確実にムダになっている公務員を減らし、民間にまわすことを考えるべきである。

 

 また、他社でやる気を失っている人材をスカウトすることにも努力することである。考えようで、日本にはまだまだ人があまっていることをリーダーは知るべきであろう。

 


第五章 創造性を高めるリーダーシップ

 

 

⑰二十四時間勤務時代のアイデア研究 -夜行族の活用で順調に回転-

 

 ムダをなくし、労働時間を短縮することは、逆に営業時間、稼働時間を延長することである。人間一人当りの拘束労働時間は短縮するが、競争激化、商品や設備のライフサイクルが短縮する時代には、反対に価値を生む時間を増やさないと経営は成り立たなくなる。 日本が世界一の経済大国になり、世界のトップをいく金融センター、情報センターになった今、交通、飲食をはじめとしたあらゆる経済活動は、世界のために働く人々の需要にこたえ、二十四時間操業あるいは深夜操業にならざるをえない。

 

 そうでなくても人不足の時代に、人が増える交替勤務などやると、ますます人はやめていくと心配する向きもあろう。しかし、交替勤務のあり方を変えていけば逆に、人不足の解消にさえなるのである。

 

 いまの若い人の中には深夜の受験勉強を長く続けたために、夜行族になってしまった人がいるし、高齢者には早く起きて困っている人もいる。これをうまく活用し、早朝は高齢者、深夜は若い人、日中は中年というように役割分担型交替制にするといい。夜専門だと割高になるので希望者は多いものである。固定観念を打破すれば人も集まるのである。

 


第五章 創造性を高めるリーダーシップ

 

 

⑯ムダをムダと思わない限りムダは減らぬ -誰にとってのムダかが急所-

 

 ムダは自明のものと思っている人がいれば、それは人間や社会を知らない人である。ムダはきわめて主観的なもので、ムダだと思わない限り、その人によってはムダではない。だから、誰が何をムダと思うかによって、ムダなくしのあり方は大きく変わってくる。まわりの人がムダだと思っても、その人にとっては、そのムダな仕事をなくしてしまったら、自分が要らなくなってしまうのだから、必死になってその仕事にしがみつき、その仕事の必要性を屁理屈をこねて主張するものである。

 

 ここにムダなくしのむずかしさがある。そのムダな仕事をやっている人に、新しく、有利な仕事を与えれば、サッサとムダな仕事はやめてしまう。人間は誰でも損なこと、不利なことをやりたがるものではない。「その人に協力してもらおうと思ったら、協力したらどんな良いことがあるかを教えなさい」というのがムダなくしにも大いにあてはまる原理原則である。

 

 ムダなくしは、作業管理や原価管理のように見えて、実は、人事管理の問題であることを、リーダーはよく知っておかなければならない。

 


第五章 創造性を高めるリーダーシップ

 

 

⑮潜在〝脳力〟の引き出しで時短の実現 -職場のムダを半減して休日にする-

 

 アイデアの真の宝庫は、もちろん人間の大脳である。この〝脳力〟こそまさに無限のアイデアの泉である。

 

 人間の脳力は一生使いまくって一割も使えれば上々であるとされている。ノーベル賞受賞者クラスで14%だそうだから、凡人はその半分の7~8%というところであろう。だからちょっと奮発して、あと1~2%も活用すると凄いアイデアが出てくる。

 

 いま、日本人は働きすぎだと、労働時間の短縮が内外から強く求められている。景気がよくて人不足なのに、とんでもないというリーダーが多いが、これも、ものは考えようである。見方を変えれば、やっている仕事の半分はムダと思うようになる。そのムダを半減すれば、休日はいくらでもひねり出せるはずである。価値を生んでいる時間を削って休むのは論外だが、ムダを減らす分にはいっこう差支えはない。むしろ大歓迎である。

 

 そして減らしたムダの半分を休みにあて、残りの半分でより付加価値のある仕事に切りかえていけば、労働時間を短縮しながら収益は増大である。これがほんとうの「合理化」である。こうしなければその企業は生き残っていけないであろう。